その後は「テイク5」「Prisoner Of Love」「Letters」といった、シリアスかつ抒情的なナンバーを続けて披露。「COLORS」はバイオリン4台、ヴィオラ2台、チェロ2台のストリングスのみを伴奏につけ、クラシカルな雰囲気を演出した。また、ステージにグランドピアノが登場すると、宇多田ヒカルは「ペプシネックス」のCMでおなじみ「Hymne a l'amour ~愛のアンセム~」を熱唱。さらに自身のピアノ弾き語りで「SAKURAドロップス」をしっとりと歌い上げた。
ライブはその後、しばらく続いていた緊張感を解き放った「BLUE」、鬼気迫るバンドサウンドが印象的なロックチューン「Show Me Love(Not A Dream)」と続き、MCへ突入。宇多田ヒカルはTwitterなどで頻繁に使っている「ぼんじゅーる!!」という挨拶を横浜アリーナで実践し、ファンも大きな声で「ぼんじゅーる!!」と返す、といった和やかなやりとりが行われた。
次なるセクションでは、再びグランドピアノを弾きながらの「Stay Gold」、歌詞をステージ上部のモニタに映してファンと合唱した「ぼくはくま」、そして誰もが知っている代表曲「Automatic」「First Love」「Flavor Of Life -Ballad version-」を披露。1998年12月9日にリリースされたデビュー曲「Automatic」について、本人は「この曲が出たのが12年前だなんて変な感じだね。1周だもんね、干支で。なんかひと区切りって感じだよね」としみじみ語った。そしてショッキングピンクのスポットライトが走り、珠玉のバラードからガラリと雰囲気を変えたのは「Beautiful World」。心地良いアップビートで観客を踊らせつつ、アウトロでは「Yeah~!」「Oh~!」のコール&レスポンスを何度も繰り返し、コンサートならではの興奮を煽った。
アンコールは、コンサートグッズの黒いTシャツにジーンズというラフな格好で、アコースティックギターを抱えて登場した宇多田ヒカル。ここでは、12月8日がジョン・レノンの命日であることにちなんでTHE BEATLES「Across the Universe」をカバーしたほか、新曲「Can't Wait 'Til Christmas」を披露。その後バンドメンバーの紹介を挟んで、宇多田ヒカルは来年からアーティスト活動を一時休止し“人間活動”に励むことについて話を切り出した。「何をしたいっていうわけでもなくて、ちょっと自分を見失いかけてた時期が長かったなぁ、自分を大切にできてなかったなぁと思うのね。自分を大切にできないのに他の人を大切にしようとしても、ただの依存だなぁと思って」という言葉で、彼女は直接ファンに気持ちを打ち明ける。
そしてコンサートは、宇多田ヒカルが15歳のときに発表した初期のナンバー「time will tell」で大団円。心を込めて2時間半歌いきった彼女は、全方位に何度も「ありがとう」とお辞儀を繰り返し、ステージを去るギリギリまで客席に手を振っていた。また、彼女を最後まで見届けた終演後の場内にも、活動休止の寂しさではなくベストなステージを堪能できた多幸感が漂っていた。