2ntブログ

「高収入の小学生売春」という現実を信じ込む思考力なき東京都知事・石原慎太郎

 統一地方選が近づくなか、現東京都知事の石原慎太郎氏にも少しずつスポットが当たっているようだ。だが、相変わらずの妄言や失言にいささかの変わりも無いようにお見受けする。

 2月14日発売の『週刊ポスト』(小学館)掲載の『シリーズ〈天下の暴論〉「日本リセット計画」』において、石原氏の発言が掲載されている。そのなかに、次のような発言が認められる。

「読売新聞が出した『親は知らない』という本によれば、携帯を使って売春する子供が、小学生でもざらにいるという。300万円、 1,000万円も貯めて、それを駅のコインロッカーに隠している。こんな風俗は他の国にはまずない」(『週刊ポスト』2月25日号 P.45より)

 ポイントは、「小学生が売春で300万円、1,000万円も貯めて」という部分だが、これが上記『親は知らない』からの引用なのか、それとも石原氏の曲解なのかは不明だが、確実に判断できることは、小学生が売春行為によって300万円とか1,000万円といった貯金をすること、あるいは現金を手にするということは、物理的に不可能だということである。

 まず、セクシャルワークは完全歩合制の出来高による作業労働であるため、その就労時間と報酬には限界がある。この点、成果報酬が期待できる営業職などとは決定的に異なる。したがって、その報酬は就労時間あるいは就労回数に報酬金額を乗じたものによって算出されることとなり、それを超えることはない。つまり、科学的管理法すなわちテイラーシステムによって割り出されるような比較的単純なものである。

 たとえば、プレイ時間60分でその手取り報酬金額が8,000円のデリヘルを想定した場合、勤務時間が早番の正午から出勤して22時まで勤務したとする。そして、フルに客がついたとしても、7~8名が限度である。移動時間などが発生するため、その分を考慮することが不可欠だからである。すなわち、そのデリヘル嬢の手取り日給は6万4,000円がほぼ上限と推測できる。延長やダブル、オプションが入ればいくらか数字が上昇するかもしれないが、せいぜいプラス数千円から2万円程度だろう。それらを考慮して、日給8万円として、月に20日勤務にして月収160万円という計算となる。

 しかし、これは実際には理論上の数値であり、実際にはもっと低い数字しか得られないのが現実である。実際、デリヘルにしろソープランドにしろ、その他の風俗店勤務にしろ、現在は月収100万円以上を稼ぎ出すのは非常に難しい。一部の男性誌などでは風俗嬢がとてつもない高収入であるなどという記事を載せたりするが、実情が伴わない架空の内容であることが少なくない。

 さて、石原発言の「300万円、1,000万円も貯めて」というのが、どれくらいの期間によるものなのか不明だが、これもどう考えても不可能である。

 まず、小学生は通常、9時から15時頃までは学校での授業を義務付けられているため、売春行為を行うとすればそれ以後ということとなる。また、深夜に活動することは学校その他の事情を考慮すればまず考えられない。さらに、自宅の近隣で売春行為に及ぶとはまず考えられないので、何らかの手段でかなり移動することが予測でき、その分の必要な時間が長くなることはいうまでもない。したがって、「携帯を使って売春する子供」の活動時間は、どんなに長く見積もっても実質3~4時間程度であり、顧客として発生する相手は概ね2~3人が上限だろう。

 次に報酬であるが、現実に発生した事件などから換算すると、こうした売春行為による報酬相当の金額は、バラつきはあるものの概ね1回当たり1万円から1万5,000円程度がその目安と考えられる。

 これらを元に、「携帯を使って売春する子供」の報酬金額を概算してみると、やはりフルに顧客が発生したとしても、1日にその手取り金額はせいぜい4万5,000円が限度と考えられる。これを20日間続ければ、月収にして90万円となる。

 あるいは、加えて土日に某所に移動して活動したと考えてみると、活動時間10時間、顧客数6名として、1日の報酬が9万円。これが8日として72万円。平日の分とあわせれば162万円の月収となる。

 ここまで書いてみて、石原発言が以下に現実味のない、荒唐無稽な幻想であるかが理解できると思われる。つまり、仮に売春行為で300万円稼ぐとしたら、平日フルに稼動しても3カ月以上、土日もあわせて活動したとしても半年以上かかる。日本のどこに、平日は放課後は毎日、休日も午前中から、街に出かけて売春行為に精を出している小学生が「ざらにいる」のだろうか。

 このように、新聞を読む程度の情報収集能力と、少しばかりの計算能力があれば、売春で巨額の現金を溜め込んでいる小学生がざらにいるなどということは「信用するに当たらない」ということはすぐにわかる。にもかかわらず、なぜ石原氏はそんなでたらめを自慢げに言うのかが理解できない。

 それに、援助交際のようなかたちでは、稼ぐよりもむしろ未成年者が事件に巻き込まれたり、被害にあったりするケースが実に多い。しかし石原氏は、そうした点についてはまったく触れることはない。

それにしても、仮にも東京都知事ともあろう方が、「小学生の多くが売春している」「売春は高額を稼げる」などといった、根拠のない憶測で妄想を吐いているなどということはないとは存じ上げるが。それとも、「俺は本に書いてあったことを言っただけ」などと言い訳でもするのだろうか。

 石原氏は、良質な保守本流の道を歩んできたのに、青少年文化の分野の話になると、ウルトラタカ派
の発言を繰り返すのは、なぜなんだろう。
 石原さん、自制してくださいな。






関連記事

Comment

Comment Form
公開設定

Trackback


→ この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)